『キリギリスの哲学』読書メモ(全章分)
May 19, 2021|ゲーム研究
去年の暮れから今年の2月くらいまで、キリギリスの会でバーナード・スーツ『キリギリス』の読書会をしていた。
- Bernard Suits, The Grasshopper, 3rd edition (Peterborough: Broadview Press, 2014).
- バーナード・スーツ『キリギリスの哲学』川谷茂樹・山田貴裕訳、ナカニシヤ出版、2015年
毎回読書メモを作っていたので、全章分をまとめて公開しておきます。内容は、章ごとの細かめのまとめと、訳が微妙と思われる箇所についてのコメント。
ゲームという題材や対話篇という語り口から取っ付きやすそうに見えるかもしれないが、内実は本格的な哲学書と言ってよい。なので哲学者以外にはあまりおすすめしない(いい意味で)。
3章が有名なゲーム定義論の部分。この本を引用する文献の大半はこの章だけを引用するわけだが、実際ちゃんと読んでみると、それ以外の部分でもかなり面白い議論をしているなという感想だった(正直議論を追うのがかなり大変だが)。
個人的に一番面白かったのは、9~12章あたりのごっこ遊びはスーツのゲームの定義に当てはまるのかどうかというところ。スーツはごっこ遊びをゲームに含めようとしているように一見読めるのだが(読書会でもそう読んでいる人が多かった気がするが)、よく読むと、ごっこ遊びの一部のケースが、ごっこ遊びであるというのとは別の点において、いくらか拡張した意味での「ゲーム」に含まれる、というくらいのことしか言っていないと思う。キリギリスの語調(訳にはあまり反映されてない)から言っても、スーツがごっこ遊びはゲームだと積極的に主張しているとは思えない。
この本は一貫してゲームにフォーカスしてはいるものの、根底にあるテーマは明らかに人生の意味だ。なのでその道の詳しい人にも感想を聞きたいところ。そういうのも含めてスーツ研究をやりますという人がもっといてもいいと思う。