『To the Moon』は琴線を殴る

Freebird Gamesのアドベンチャーゲーム『To the Moon』の日本語版が11月16日にPLAYISMから出ます。

PLAYISMさんのレビュー企画で配信に先行してβ版をプレイさせていただきました。

とりあえず3周して3回鼻水出ました。

完成されたドット絵表現と美しい音楽で紡がれる切ない物語は、『FF6』のダリルイベントなどで余裕で泣いてしまう私にとっては殺人的なものであります。

というわけで、

  • ドット絵好きでブワッしたい人には猛烈におすすめ。
  • ゲーム要素はほとんどないので、普段ゲームしない人にもおすすめ。
  • 既婚者やこれから既婚者になる人にもおすすめ。
  • すべての愛ある人におすすめ。

琴線をハンマーで殴られるといいです。
映画2本分くらいの時間で終わります。

以下細かいレビューです(ネタバレはないよ)。

ゲームシステム

  • RPGツクールXPをエンジンとして使っているが、RPGとは言いにくい。
  • 戦闘がなく、結果として能力値等のパラメータが一切ない。
  • アイテムもネタ(つまり物語の補助的な構成要素)としてあるだけで、ゲームシステム的に意味なし。
  • ゲーム性と呼べるものは、ちょっとした絵合わせパズルがある程度。
  • なので、『Machinarium』みたいなクリックアドベンチャーをツクールのフォーマットにしたものといったかんじ(マウスでやるとますますそんなかんじがする)。
  • 基本的なゲームプレイはそれっぽいところを触ってフラグ立てていくだけなので、ゲームだと思ってやると相当だるい。
  • 微細な分岐がなくはないけど、基本一本道。

映像表現

  • ツクール様式というよりむしろ、ほんものの94年~96年くらいの後期スーファミ様式の完成形といったかんじがする。
  • ドット絵バロックとでも言うべきあのかんじの真髄をわかってるかんじ。

とくに、キャラクタの表情の表現が本当にすばらしい。

全体的に色彩とかライティングに非常に気をつかっている。ざらつくテクスチャが渋い。

サウンド

  • Laura Shigihara神としか言いようがない。
  • 曲のおかげで感動場面が多すぎて疲れてくるという問題はある。

ストーリー

シグムンド社に雇われているふたりのドクター、エヴァとニールは、死に瀕した人の願いを(その人の想像のうちで)かなえるという仕事をしている。

彼らは特殊なマシンで患者の古い記憶にもぐりこんで、その願いを記憶の中に植えつける。そうすると、患者自身の頭のなかで、その願いを伴った新たな記憶の系列が再創造される。そして、うまくいけば、その想像のなかで願いがかなえられる、というわけ。

今回の患者は妻に先立たれたおじいさんジョニーで、その願いは「月に行きたい」というもの。しかし、そう願う理由はよくわからないし、ジョニーの過去も詳しくはわからない。

そういうわけで、プレイヤーはエヴァとニールを操作して、ジョニーの記憶をどんどんさかのぼりながら、過去の出来事や願いの理由を探っていくことになる。

ジョニーは住み込みの家政婦とその二人の子どもに世話されている。

主人公たちが着いたときには、ジョニーはもうすでに昏睡状態で話を聞くことはできない。

家の中を調べてみても、奇妙な部屋が見つかるなど謎だらけ。

家の裏手の灯台や、亡き妻リヴァーとの思い出がなにか関係しているように思われるが…。

基本的に、過去に進むごとに少しずつ謎が明らかになる構造になってるので、ゲームを進めるモチベーションとして非常にうまく機能している。

ストーリーの焦点は一貫してジョニーとその妻リヴァーにあるが、プレイヤーキャラクタであるエヴァとニールのキャラがかなり立っていて、その都度のシニカルでナンセンスな掛け合いがうまい具合にスパイスとして効いている。

喜ぶリヴァー。

ジョニーとリヴァーの会話。

一人たたずむジョニー。

エヴァとニールのナンセンスなやりとり。

ローカライズについて

  • 日本語訳は本当にすばらしいと思います。
  • コミカルな場面も感動的な場面も(JRPG的に)自然なかんじ。
  • ローカライズで一個だけ気になったのはフォント。セリフのもだしメニューのフォントもそうだけど、オリジナルのフォントや全体の雰囲気を考えれば、もうちょっと細身で小柄の縦長フォントがよかったなあと思う。

というわけで、何回も書きますけど、名作なので超絶おすすめ。

以下考えたことなど。

アストラルゲートさんが書いてるように、なぜこんなに泣けてしまうのか問題は、ゲーム研究的にも気になるところではある。

NYDGamerさんが言うように、物語展開やその結末自体はわりとありがちで、たいして驚きのないものかもしれない。たしかに、これを映画とかにすると安っぽい話になって、ここまで感動的なものにならない気がする。

たぶん、伝統的なRPG形式かつドット絵による物語表現だからこそ、絶妙ななにかが成立してるんじゃないかなと思う。その様式に対して特定の受容モードをとれるかとれないかで、もしかしたらけっこう評価が分かれるのかもしれない。

そのあたり、ちょっと考えてまたなんか書きます(部分的にネタバレになっちゃうので、正式版でたあとに)。

あと、毎日ムキムキさんが書いてるみたいに、「これは実はそんな単純に感動できる話ではない」みたいな解釈は面白い。わりと同意。とはいえ単純に感動して泣きますけどね。